「とにかく俺は…聞くよ」
だけど、それしかいえなかった。
彼女は俺を見て、ため息をこぼした。
そんな彼女から逃げるように俺もためいきをついて頭を下げる。
「…もういいよ。忘れて」
元保はそういうと、俺の横を通り過ぎてドアに手を掛けた。
「ここまでついてきてくれてありがとう。」
扉をあけて、出る前に振り返ったその顔は今にも泣きそうで。
「あと…ごめん…」
ドアが閉まって彼女の足音が遠くなっても、椅子から立ち上がる気力はなかった。
鐘の音などどうでもよかった。
何故か、元保の泣きそうな顔が離れなくて。
ため息をついて背もたれに体を預けると、パイプ椅子が大きく軋んだ。


