「馬鹿だよ、お前」
そういって笑う恭治。
「お前も相当馬鹿だよ」
そう言い返して笑う俺。
恭治は、何かを吐き出すように息をついて「初めてだ」と呟いた。
その言葉に、俺は笑うのを止め恭治をみた。
「俺に殴られて、『しょぼい、大したことねぇ』って立ち上がって向かってきた奴…」
お前が初めてだ。
恭治はそこまで言うと、小さく微笑んだ。
なんだか、照れくさくなって「ふーん」と短く呟いた。
正直言うと嬉しかった。
認められたように思えたからか、恭治の口から教えてもらえたからか。
分からないけど、ただ。
ただ、嬉しかった。
そんな俺に急に、激しく鳴るバイブ音と共にポケットが振動した。
俺は急いで、手に取ったが震えは止まり切れた。
誰かからだ?


