恩人か。
恩人だな。
だったら…。
一人そんな事を考えていた俺に、恭治はカギを開けて扉を開いた。
焦る俺は、スタスタと入っていく恭治の後ろを追いかけ八畳程の居間の入口でさっき考えていた事を思い出しながら、一礼をした。
「えっと、こんばんは。進藤和希と言います。夜遅くにお邪魔して申し訳…」
「おい、なにしてんだよ」
突然恭治の声が聞こえ顔を上げる。
とそこには、誰もいない空間に綺麗に片付けられている家具があるだけだった。
驚いている俺と対象に恭治は吹き出すように笑っていた。
「ばーか。誰もいねぇーよ」
恭治は、腹を抱えながら大きな声で笑う。
たしかに、誰か他に住んでいるなら荷物がたくさんあるはず。
だけど、この部屋意外に部屋はなくそれにベッドがひとつ机がひとつ、あるだけのあまりにもシンプル過ぎるものだった。
「一人暮らし…なのか?」
俺のその質問に、クククと喉を鳴らしながら恭治は「ああ」と頷いた。


