「おーい! ロッティー」

荒れ地を歩いていると、誰かの呼び声が聴こえてきました。
ふり向くとチャムが息を切らせながら追いかけてきます。
腹が立っていたので、わざと気がつかないふりで
どんどん早足でロッティーは歩いていきます。

「ま、待ってくれよぉー」
泣きそうな声で、チャムが呼びかけてきますが……。
「なぁに?」
おもいっきり、ふくれっ面でふり向きました。
「お願いだから……待ってくれ」
「しらない!」
「ロッティーに、わたしたい物があるんだ」

「これを……」
そう言うと、チャムは手に持った物を見せました。
それは小さな花の苗でした。
かれんな、パンジーみたいな黄色いお花が咲いています。

「これは?」
「月風草(つきかぜそう)って言って、俺の森にしか咲いてないんだ」
「とっても可愛いお花ね」
「うん、香りもいいんだ」
「これをわたしに……」
「ムーンライトの森に持って帰って植えてくれよ」
「ありがと……でも……」
ロッティーは少し考えました。
またチャムにだまされるんじゃないかと……。

「まさか、盗んできたんじゃないでしょうね?」
「ちがうよ! 崖をよじ登って俺が摘んできたんだ」
そう言えば、チャムの身体には土と草がついています。
よく見れば、手にすり傷もありました。
たぶん、崖をよじ登るときについたのでしょう。

ウソつきだと思って、チャムをうたがって悪かったと思いました。