「どうせ、チャムがやったことだろう。この森で一番のウソつきだよ」
「じゃあ、この森の王様っていうのはウソなんですか?」
「あのチャムがかい?」
カァーカァーとカラスのおばさんが笑いました。
「この森には王様なんかいないさ」
「そうですか」
「チャムは赤ちゃんの時にお母さんが死んでしまって……」
「まあ……」
「ひとりぼっちで寂しいから、ウソをつくのかも知れない」
カラスのおばさんがしんみりした顔で言った。
ロッティーはチャムが少しかわいそうだと思いました。

「おまえは正直だから、うたがうことを知らない」
「はい……」
「だから、だまされるんだよ」
「……そうです」
すっかりロッティーはしょげてしまいました。
「ウソつきよりも正直者の方が心はきれいだよ」
「えっ?」
「キラキラ光るきれいなものが好き! だからおまえの心も好きだよ」 
黒いツバサで、ロッティーをやさしく包みました。

「これは、おまえにあげるよ」
「えっ! ホントにもらってもいいんですか?」
「あたいはウソをつかないさ」
「ありがとう! カラスのおばさん」
陽にあてると、色ガラスは透明な光をとおしてキラキラ輝いています。
ちょっぴり、うれしくなりました。

ロッティーはカラスのおばさんにもらった
キラキラ光る色ガラスをお土産にすることができました。
分かってくれた、カラスのおばさんに「さよなら」をして
今度こそ、真っすぐお母さんの元へ帰ろうと思っています。
なにがあっても……もう人の話に耳をかさない!

ムーンウインドの森の出口に近づくと
何やら大声で言い争う声がきこえてきます。
だけど、ロッティーはきこえないふりをして、目をつぶって
足早に通り過ぎようとしましたが……。