「クックックッ……」
変な笑い声が聴こえてきました。

大きな木の陰から、ひょっこりとチャムが
顔をのぞかしています。

「あー!」
思わず、大声で叫びました。
「王様のせいで、あたしがドロボウにされたじゃないの」
チャムの顔を見たとたん、ロッティーは腹が立ってきました。

「なんで、俺さまのせいなんだよ?」
「だってぇー、にんじん食べてもいいっていうから食べたのに……」
「食べてもいいって言ったけど……俺さまの畑だとは言ってないぞ」
「えぇー?」
「おまえが畑の持ち主を聞かないで、かってに食べたのが悪いんだ」
「……そんな」
たしかに、ロッティーはお腹が空いていたので
かってにチャムの畑だと思いこんで、食べてもいいと言われて
ガツガツとにんじんを食べたのです。

「しかも食べただけじゃなくて、リュックにまで詰めただろう」
「ええ、そうよ」
「欲ばるから、あんなに野うさぎが怒ったんだ」
「欲ばる……」
ロッティーはお母さんとの約束を思い出した。

欲ばらない……。
ロッティーは欲ばって、ひどい目にあったのです。
欲ばった自分も、悪かったと反省しました。

――こんな森にいるのは、もうたくさん!
ムーンライトの森にすぐに帰ろうと思いました。

「じゃあ王様、さようなら!」
さっさっと帰り始めました。
「おい! ちょっと待てよ」
ロッティーの腕をチャムがつかみます。
「なぁに?」
「おまえに、きれいなものを見せてやるぞ!」
「きれいなものって?」
「いいから、ついてこいよ」
腕をつかんだまま、無理やりロッティーを
引っぱって行こうとチャムがします。

「痛いわ、はなしてよぉー」