「綾ももうすぐ中学生ね。学校はどう?」

ママが言った。いかにも、母親らしい台詞だ。

「そうね。最近いじめが流行ってて、お母さんのいない私ってば、その対象になってるみたい」

「冗談でしょ?」
ママが真顔できいてきた。

「冗談よ。友達とはうまくいってる。瞬も一緒のクラスだしね」

私がクラスの男の子と取っ組み合いの喧嘩をしたと知ったら、ママは何て言うのだろう?

「そぅ、ビックリした。ニュースとかで最近よくイジメで自殺したとか聞くから、ちょっと本気で心配しちゃった」

「ごめん。で、ママはどうなの?」

そう言って私は、注文したイチゴパフェを口に詰め込んだ。

何と言っても、この店で一番美味しいのは、パフェなのよ。

この喫茶店はパパとママが昔付き合い出した頃に、よく来ていたお店らしい?

今では、私とママの方がよくここを利用している。

パパとママが別れたばかりの頃、私とママはここでしょっちゅう会っていた。

パパと別れた時に、全てを捨てたママが、たった一つだけ付けた条件。

それが、『私と定期的に会えること』だったらしい?

でも最近では、ママはかなり忙しいらしく、海外に行っていることも多くて、会うのは本当に久しぶりの事だった。

「ところで、勉強はちゃんとしてる?一湖」

「この前国語の漢字テストで満点取ったのよ。でも、理科で赤点取っちゃった」

「そう、理数系はお母さんも得意じゃなかったなぁ。でも、しっかりやらないとね」

「うん。パパに教えてもらってる。パパは得意なんだよ」

「ふ〜ん。作家って、そういうのに詳しいのかしら?」

私の顔を見ながら、ママがそう言った。

そして、私がもう一口パフェを口に運ぼうとした時、私は大事なことを思い出した。

「あ、そうそう・・・」