この瞬間に思い出す


八頭にさよならした日のことを…


匡人に抱きしめられて思う存分泣いた―…


傍にいるのが匡人じゃなかったら私は泣いたのかしら…?


強がって平気な振りをしていても匡人は鋭い瞳で射抜いてくる


だから怖くなる


これ以上触れられたら―…


私はバカみたいに自分をさらけ出してしまうだろう…











『匡人様、ようこそお越し下さいました』


ホテルの従業員が一斉に頭を下げる


60を過ぎた初老の幹部が孫くらいの年齢の匡人に頭を下げる図…


今まで高屋先輩や美弦の陰に隠れてたけど、この人も人が羨む大財閥の御曹司なんだよなぁ…


『お世話になります』


匡人が胡散臭い(私にはそう見える)笑顔を振りまくと女の従業員が顔を赤く染めた


………なんかムカつく