「邪魔だ。どけ。」




さっきの馬鹿な声ではなく、低い声が私の耳に入ってきた。



そして、その後すぐに




「く、来るなぁ!!来るな来るなぁ!!…っ、うっ…」



「ガハッ!」



「ま、待て!見逃してくれ!ギャアァアアっ!!」




何か恐ろしい物に怯えたような声と、何かが折れたり踏み潰されたりする酷い音、人が倒れる音が耳に入ってきた。



何が起こってるのか、とか分からずそのまま耳と目をギュッと塞ぐ。




耳を塞いだ私の両手は無様にもガタガタと大きく震えていた。




「おい、終わったぞ。」




それから暫くして騒がしかった音が聞こえなくなり、さっき聞いた低い声が私の耳に響いた。




そっと耳から手を外し、目を開ける。




「大丈夫か?」




そこで私の目に入ってきたのは――――






「赤色――…。」






燃えるように真っ赤な色の髪をした男の人だった。