《SINE》に入るとまず目に入ってくるのは頭がカラフルな《SINE》の人たち。最初はビックリしたけど慣れてしまったらどうってことない。




「稚春さん、ちわっス!」



カラフルな人達の間を作業の邪魔にならないように通っていると、ニカッと笑って頭を下げてくる雷太(らいた)。



雷太っていうのはこの前隼人に私を彼女なのかって聞いた緑モヒカンね。雷太はいつもニコニコしてて可愛いんだよね。でも緑色の頭がその辺に生えてる雑草に見えちゃうのが欠点かな。



「雷太ちわっス!塚、頭下げないでって言ってるじゃん。あと「さん」付けじゃなくて呼び捨てでいいってば。」



《SINE》に来て最初の会話がこれになりつつある雷太と私のこのやり取り。これはどうにかしなければ。だけど雷太が「さん」を外してれないんだよね。


さっきみたいに呼び捨てで呼んでって言ったら必ず。



「や。そんな訳にはいきません!」



これだから。


とんでもないっ!という風に首を振る雷太に、またか。と小さく息を吐く。



「何でダメなの?」


「何でって稚春さん分からないんですか…?それは「おい稚春。来てんなら早く二階に上がってこいって何回も言ってんだろ。毎日言わす気か?」」




雷太の言葉をいいところで別の声が遮った。



この声は聞いたことある。いつも自信満々で俺様な赤い髪の毛の持ち主の――――…ほらね、やっぱり。




「隼人。」



雷太の言葉を遮った主の名前を呼ぶ。呼ばれた本人は相変わらず不機嫌な顔で立っていて。



「(そんなに眉間に皺寄せて疲れないの?)」



なんて。思ってしまう。



「隼人さん!ちわっス!」



そんな失礼なことを思っている私とは反対に雷太は慌てた様子で隼人に頭を下げる。



だけれど雷太を無視して私の方に近付いてくる隼人は嬉しくないが私しか見えないようだ。返事を返せ。雷太に失礼だろうが。