赤い狼 壱






「着いたよ、稚春ちゃん。」


「茂さん、ありがとうございました!これ、いつものお礼です。二枚ぐらいしか入ってないですけど。」



今朝作ってラッピングしたクッキーを茂さんに渡す。するとさんはキョトンと目を丸くさせて。



「えっ、え?」



手を引っ込めたり出したりしてクッキーを受け取ろうかどうか迷っていた。


だから無理やり茂さんの手に握らせて「いつもありがとうございます。」にこり、笑って茂さんの手を握りしめる。



「~~っ、ありがとうなー!おじさん嬉しいなぁ。」



嬉しそうに笑う茂さん。その目には涙がうっすら見える。「泣いたら私も泣いちゃいそうですよー。」と笑うと「泣いてねぇしバーカ!」と子供みたいな返答が返ってきた。馬鹿って言ったよ、この人。



塚さっき自分でおじさんって言ったな、茂さん。根にもってんのか。私が25歳かと思ったって言ったの根にもってんのか、この人。




「歳間違えてすいませんって。だから根に持たないでくださいよ。」


「根に持ってねぇよ。ただ、ちょっと仕返ししないと気がすまないだけで「それを根に持ってるって言うんです!」」



ふんっ!ただ見た目が大人だから言っただけなのに!心が狭いんだから!!だいたい誰が悪いと思ってるの。妙に大人びた茂さんが悪いんだよ、そーだよ茂さんが全部悪いんだ!!!



「茂さんのぶぁーか!!!」


「ふはっ!おう、じゃあな。ありがとな、クッキー。」



なんとも子供な捨て台詞を吐いて車の扉を強く閉めた私に茂さんが笑いながら手を振ってくる。


それにアッカンベーと舌を出して目の下を引っ張ると茂さんが車の中で大笑いするのが目で見てとれた。




その光景になんだか笑いが込み上げてきて、くすり。笑って茂さんに頭を下げて《SINE》への扉を開けた。