「…………っ、」
バチンッ!
「っ、たっー…」
「あぁああ!すいませんすいません!!大丈夫ですか!?」
頬を押さえて背もたれに体を預けている茂さんに慌てて目を向ける。
さっきの台詞と行動に耐えきれなくなってしまって茂さんの頬を思いっきり叩いてしまった。おかげで茂さんの左頬にはくっきりと紅葉の形をした手跡が。
申し訳ないが、茂さんも茂さんだ。子供をからかうのはよしてほしい。
さっきの尋常じゃない色気を思い浮かべながらまだドキドキとする胸を押さえる。
あっぶない。やられてしまうとこだった。悩殺されるとこだった。大人の色気を持った茂さんがやると冗談では済まされない。
「今回のは、私も悪いですけど茂さんも、悪いです!!」
「なんだよ俺の悩殺色気が何か問題あんのかよー。」
「じ、自覚してたんですか!?っていうかわざと!?」
「わざとだよわざとー。だって稚春ちゃん可愛いんだもん。いじりたくなっちゃうよ、おじちゃん。」
「こんちきしょおおおぉおおおぉ!!!」
ムカつく。むっかつく。茂さんに騙された。
「いい大人が何しくさってくれてんすかぁあ!」
「さて、早く行かねぇと隼人が怒っちまう。しゅっぱーつ!」
「人の話聞きやがれー!!」
もう一度言う。茂さんは見た目のわりには優しくていい人……なんだ。

