赤い狼 壱






え。ちょっと待って。待ってててて。今すんごい音したんですけど。私の頭が不自然に右に飛んでいったんですけど。左から物凄い力の拳が飛んできたんですけど。どなたですかね?




「私が犯人見付ける前に自覚がある人は挙手なさい。」



「そんなんで手ぇ挙げるわけないじゃないのー。」



「そこのピンク頭ぁあああぁあ!!お前じゃないか!さっき私の頭を飛ばしたのはー!」



「あらやだ。人聞き悪いわ~。俺はそんなことやってねぇよー。いたいけな俺を犯人扱いするなんて稚春ちゃんはなんて酷い子なのっ!俺が犯人だっていう証拠を見せて見ろよ~。おー、さっき殴った右手が痛ぇじゃねぇの。」



「やっぱりお前が犯人じゃねーか!!」




ひらひら。顔を歪めながら右手を振るピンク頭、銀を冷ややかな目で見る。


え、なにこの子。自分で犯人と思われる証拠言っちゃったよ。馬鹿なの?馬鹿なの!?





と、




「稚春?大人しく人の話は聞こうって小学校で習わなかったのかな?」



「ひいっ!!」




恐ろしいほど低い声の棗……いや、棗様が私の耳の軟骨辺りをつまんで引っ張ってきた。


いだだだだだ!!ちぎれる!耳がちぎれる!!




「ちゃんと聞こうね?」



「はぃいいー!!」



「じゃあ、気を取り直して…。さっ言ったように俺等はここで仕事してるんだけど、その仕事がちょっと特殊でね。飲食店の経営の仕事をやってるんだ。そんな大きなものではないんだけど。まぁ俺らは店を貸してひとまずの金を貸して店をやりたい奴に好きに経営させてるだけなんだけどね?今のとこは、ざっとこのくらいの店が出てるよ。ほら。」




棗がそう言いながらいつ、どこから出したのか不明なパソコンの画面をこっちに向けて私に見せる。


速。凄い速かった。え、何?棗ってマジシャンなのっ!?今の神並みに速かったんだけど!