赤い狼 壱






軽く泣きそうになっていると、急に私の腕がぐいっと引っ張られた。そのまま、連の胸元に顔が押し付けられて視界が完全に隠されて。




「で、なんか文句あんの?」




挑発的な言葉が連の体を通して私に伝わってきた。





そんな言葉を聞いて悲鳴をあげたくなったのは当然だ。





「へぇ…、上等じゃねぇか。表に出ろや。」



「おぉ、やってやろーじゃん?」




連の胸板で視界が塞がれて見えないけれど隼人と連はきっとメンチのきりあいをしてるんだろう。



銀が「おっと!!これは実況銀次郎の出番かぁ?」嬉しそうにそう言っているから。銀次郎って誰だよ。




ひしひしと連と隼人の一触即発の雰囲気を感じながら身を縮める。どちらかが少しでも動けば喧嘩になりそうな雰囲気だ。



喧嘩になるのも時間の問題だな、と冷静に考えてみる。だけれど私には私の限界がある。





(酸素が足りない。)




取り敢えず、息がしたい。