赤い狼 壱






昨日の事を思い出して、めまいがする。



赤い髪の男は昨日、予備校に行く途中で見た…あの、恐ろしい男。




「はぁ…。まじ、有り得ないんですけど。」



「あ゙?」




目の前の綺麗な顔がグニャリと歪む。




……あっ。

やっちゃったよ…。



今の思いっきり口に出してた。



ヤバい、と自分の身の危険を感じながら、そろーと赤髪の男の顔色を窺う。




すると、やっぱり…



怒っていらっしゃった。



赤髪の男は、眉間に深い皺を作って私を睨んでいる。




「お前、さっき何て言った?」




ひっ!話し掛けて来んなっ!!


鋭く睨んでドスのきいた声で話しかけてくる赤髪男に鳥肌がたつ。




「いぃえっ!私、何も言ってませんっ!私の顔は忘れてください。すいませんでしたっ!」




関わりたくない。こんな奴と。


昨日、助けてくれた事は感謝するけどそれとこれは別。

私は平和に生きたいのだ。なのに、この人はどこからどう見ても目立つ。


絶対、私の平和な生活に何らかの影響を与える気がする。だから、関わりたくない。




早くこの場を立ち去ろう、と頭を下げて床から立ち上がろうとする。





「おいコラ待て。」





だけど、私の腕はそいつに掴まれて逃げる事が出来なかった。