昨日の事を思い出して、めまいがする。
赤い髪の男は昨日、予備校に行く途中で見た…あの、恐ろしい男。
「はぁ…。まじ、有り得ないんですけど。」
「あ゙?」
目の前の綺麗な顔がグニャリと歪む。
……あっ。
やっちゃったよ…。
今の思いっきり口に出してた。
ヤバい、と自分の身の危険を感じながら、そろーと赤髪の男の顔色を窺う。
すると、やっぱり…
怒っていらっしゃった。
赤髪の男は、眉間に深い皺を作って私を睨んでいる。
「お前、さっき何て言った?」
ひっ!話し掛けて来んなっ!!
鋭く睨んでドスのきいた声で話しかけてくる赤髪男に鳥肌がたつ。
「いぃえっ!私、何も言ってませんっ!私の顔は忘れてください。すいませんでしたっ!」
関わりたくない。こんな奴と。
昨日、助けてくれた事は感謝するけどそれとこれは別。
私は平和に生きたいのだ。なのに、この人はどこからどう見ても目立つ。
絶対、私の平和な生活に何らかの影響を与える気がする。だから、関わりたくない。
早くこの場を立ち去ろう、と頭を下げて床から立ち上がろうとする。
「おいコラ待て。」
だけど、私の腕はそいつに掴まれて逃げる事が出来なかった。

