赤い狼 壱






でも言えないから口を閉ざすしかできないんだ。だって、言ったら絶対に、実や香に心配かける。



それだけは絶対にしたくない。心配だけは、させたくない。





「稚春、大丈夫~?具合悪い~?」



「あーうん。大丈夫。と、思う…。」



「なぁに?それ。」



「いやー、うん?何だろーね?私も分かんないや。」




心配そうに私の顔を覗き込んでくる香にハハッと乾いた笑いを溢す。


すると、香には何にも言ってないのに




「言えないんなら言わなくていいけど、"言える"って思った時は言ってね?ちゃんと聞くからねぇ。」




私の心を分かっているかのように言ってきて、思わず泣きそうになった。





「…うん。ありがとう。」




本当に、香も実も優しいんだから。