赤い狼 壱






ふふっ、と顔を緩む。


すると、それを見ていたらしい香が「今のもう一回やって!さぁ笑うの!!」必死になって手を握ってくる(もはや潰す勢い)から顔を顰めた。



女のくせに力強いな。




「香、その辺で止めときな。稚春が痛そうだって。」




「実…。」



「感動はいいことだけど抱きついてくんなよ。ってか何で稚春は今日遅刻?稚春が遅刻なんて珍しくない?あ。もしかして、お腹痛いの治った後に男と逢ってたの?」





――ギクッ――





最後の方はニヤニヤしながら言ってきた実の鋭い質問に一瞬、動揺してすぐにその動揺を隠す。なんだってこんなに実は勘がいいんだ。




「違うし!昨日はお腹治ったら急にゲームしたくなってしてたら夢中になっちゃってたの!」



「ムキになるのが怪しいわね…。まぁ、稚春は無類のゲーム好きだから信じなくもないけど。」



「(疑ってるな。完全に。)」



「夜更かししない程度にしなよ。」



「…あい。」




まぁ許してやるか。みたいな顔でそう言われて俯いた。



あーぁ。友達に嘘つくって厳しいな。