赤い狼 壱






そう言って優しく笑う実に感動を覚えた。




「み、実~!!」



「引っ付くな!」




ガバッと抱きついた私の背中を実がバシバシと叩いてくる。うっ。結構強めだな。でも絶対離してあげない!



嫌がる実にもっと嫌がってもらおうと実を抱きしめる腕に力を入れた。実、大好き!!



と、感激を実に伝えていると。




「もうっ!二人共っ!香の存在忘れてない~?」



「あ、香っ!」




何故か一番前の席のはずな香が実の前の席に座っていた。え、どっから沸いてきた?




「稚春、香寂しかったよ~。なんか稚春居ないと盛り上がらなくて私達も途中で帰っちゃったよ~。でも昨日はごめんねぇ。香、自分の事しか考えてなかった。」




香が眉を下げたと思ったら私に抱きついてきて謝った。私はその状況に目が点で。




「え…と?えと…うん、いいよ。大丈夫だし…。それに私も勝手に抜け出してごめんね。」




どもらないようにするのが精一杯だ。




「本当っ?許してくれる?」



「うん。香も私のこと許してくれる?」



「うんっ。当たり前~。じゃあ仲直りねっ!握手~!!」




仲直りだ、と思ったら安心したみたいでパアアァと笑って差し出してくる香の手に自分の手を重ねる。




………なんか、友達と握手とか恥ずかしいけど…嬉しいかも。