赤い狼 壱






WCと書かれたドアを開ける。



周りを見渡すと、入ってすぐのトイレの鏡に自分の顔が映った。



鏡越しに自分を指で触りながら、私が小さかった頃の事を思い出す。





――――あんたなんてこの世から消えればいい。




――――お前なんか生まれなかったらよかったんだ!




――――食わせてもらえるだけありがたく思え!!








誰かが昔、そんな事を私に言ってたよなぁ。



でもまぁ…


私もそう思うよ。




私、要らない人間だし。



誰も、私を必要とはしてくれない。

役立たずな私。




もし、こんな私を必要としてくれる人が居たとしたら見てみたい。



…まぁ、私が必要とか言ってくれるんだから多分、変わった人だろうけど。



フッと自虐的な笑みを浮かべる。



鏡に映った自分が歪んで見えた。