赤い狼 壱






…ここまで来ると、この強引さも尊敬するよ…。



そう思いながら目を細めて実を見る。



あ。玉ねぎっていうのは、星隆高校の男の中で一番冴えない髪の毛をキューピーちゃんみたいにたたせた男で、首から上が完全に玉ねぎに見えるから玉ねぎ…



まだ説明してなかった、私の隣に座っていた人だ。


っていうか、そんなん私に任せないでよー!




………取り敢えず、




「ちゃんと帰ってくるから、トイレ、行っていい?マジでヤバいんだけど。」




実に勘付かれないように嘘をつくしかない。




玉ねぎの件を聞いてますます早く帰りたくなって、二人には悪いけどフリで、本当にヤバい!という顔をする。



そんな上手いのか上手くないのか分からない私の演技を見た実は




「えっ。何、ホントだったのっ!?早く行ってきなっ!!」



まんまと騙されて解放してくれた。




…はぁ。あの人を騙すのも一苦労だ。



一応、実に変に思われないようにトイレへと歩く。



その途中、大きく一つ、ため息を漏らした。