赤い狼 壱






そして、開いたドアから見えた光景に自分の目を疑った。




「っっ!よっしゃーー!!勝ったぜっ!稚っ春ー!」



「おぉー!良かったねぇ。って、ギャー!押し倒すなっ!!」




ゴチンッと床に頭を叩きつけていい音を鳴らす稚春を見つめる。


いや、正確に言えば"稚春の上に乗っかってる奴"を見てだ。




「稚春、好き好き~。」




ソイツは稚春の頬にすりすりと自分の頬を擦り付けている。



………んだこれ。ドッキリか?



飼い主になつく猫みてぇな行動をしている連をガン見する。



あ、あり得ねぇ。あの女嫌いな連が、あり得ねぇ。



と、呆然とその場に突っ立っていたら稚春が俺らに気付いた。




「あ。どうも。」




軽く頭を下げた稚春は俺の後ろに視線を移して、すぐに連へと視線を戻す。



目を細めて連の頭を撫でる様は母親のようだ。




「…おい。連って、女嫌いじゃなかったか…?」




ポツリと低い言葉を部屋に落とす。