赤い狼 壱






そのまま急ぎ足で一直線に歩く。



もう少しで出口だ。


やった!と心を弾ませる。帰ったらお風呂に入って寝よう。




そして、出口までもう少しのところで───





「稚春!」





捕まってしまった。


悪魔こと、実に。




出ようとする私を走って追ってきた実は、私の耳元で周りの人達に聞こえないように小さく喋る。




「ちょっと。何で役目まだ果たしてないくせに帰ろうとしてんの?」



「役目って何っ!」



「あの玉ねぎの世話よっ!」




実が当然でしょ、と言うような態度で私を見てくる。




……ええぇぇえぇ。そんなのいつ決まったんだ。



あまりの身勝手な実の発言に絶句した私に実は、だから早く戻ってよ。と少し怒り気味に呟く。




戻ってよ、って…。



嫌に決まってんじゃん。