赤い狼 壱






《SINE》の建物の前に着いて顔を上げると雷太が走って俺のところに来ているのが目に入った。


その顔は焦りと困惑が表れていて、何があった?と思わず聞き返す。




「れ、連さんが……ハァッ、稚春さん、と…っ。」




広い《SINE》の建物から全力で走ってきたのか息を整えながら喋る雷太。




「おいっ!?隼人!!」




そんな雷太の話を最後まで聞かずに二階の部屋へと急ぐ。


棗が俺を呼ぶ声が聞こえたけど振り返らずに走った。




ヤベェ。やっぱり女嫌いな連と稚春を一緒の部屋で待たせるなんてすんじゃなかった!



稚春に何かがあったのかと思うと、《SINE》が広いのに腹が立った。


広い。そして、あちぃ。




「あ、隼人さん!ちわっす!!」


「隼…人さん!?」




《SINE》の奴等が頭を下げていく中をひたすら走る。


連にもし稚春が危害を加えられてたら、という焦燥感が俺の不安を掻き立てていく。