赤い狼 壱






だんだんと人気のなくなってくる部屋の奥に足を進める。



ここは《SINE》のまとめ役の総長、副総長、幹部しか入れねぇ二階へと続いてる階段がある場所。


だから滅多に《SINE》の奴等は寄り付かねぇ。来たとしても大事な用があった時くれぇだ。



要するに、この階段へと続く二階は《SINE》にとって神聖な場所っつー事。


だから二階に女を連れてくる事は滅多にねぇ。《SINE》の奴等が心を許した、そんな奴しか入れねぇ場所だから。




そんな場所に稚春を招こうとしてんのは一か八かの賭けだ。



コイツはそこら辺に居る女とは違う。どこが違うのか、とか聞かれたら分かんねぇけど稚春は何か違ぇもんを持ってる気がしてならねぇ。



だから、変えてくれるんじゃねぇかと、期待している。

今の壊れかけたこの《SINE》を。関東統一してどこの暴走族よりも強い《SINE》だが、今はその形成が崩れつつある。



それはいけねぇ。一代目が一生懸命、戦って取った関東No.1の座だ。この座は他の族に譲るわけにはいかねぇ。


だから、稚春に賭けてみる事にした。実際お前と居る今、荒れていた心が穏やかでしょうがねぇよ。



逃がすわけにはいかねぇんだ。