ーーーヴーッヴーッーー

英美の携帯のバイブが鳴り響く。
彼氏から着信。

英美は隣で寝ている康太を起こさないようにトイレに向かい電話に出た。

「もしもし」

「今日早く終わるねんけど飯行かん?」

「……」

「…なに?今なにしてんねん」

少しムッとした声が聞こえた。


「ごめん…行かれへん。」

勇気を振り絞って声を出した。掌には汗がにじむ。

英美は今まで彼氏からの誘いを断ったことがない。
忘年会、同窓会にも行ったことはないし、友達と遊ぶのにも許可がいることから面倒になり友達とも遊ばなくなった。


「…ハァ?なんで?なんかあんのか?」

明らかに不機嫌な彼氏の声に手が震える。

「…もう、わ…別れたいと思って」

声が震える。

「…なんで?」


ゴクッと唾を飲み、ハァッと深呼吸した。


「好きな人ができた」

全身がひんやりとした汗で包まれている感じがした。