『帰るのか?』


スカートのファスナーを上げる私に匡人はタバコを吸いながら尋ねた


「あんたみたいに金持ちじゃないの」


その辺に脱ぎ捨ててあったシャツを拾う


『バイトか?』


「そうよ」


貧乏暇なし


私も世間の例に当てはまる


『ゴクローサマ』


匡人は灰皿にタバコを押し付け火を消した


『来いよ』


シーツから覗く胸板はとてつもなく魅力的だった


「……帰るって言ってるでしょ」


なるべく匡人を見ないようにシャツのボタンをとめる


『可愛くねぇ…』


匡人はベッドから私の腕を引いた


「ん…」


口中にタバコの味が広がって咳こみそうになる


『せーぜーガンバレ』


唇を離した匡人の心のこもってない励まし


無性に張り倒したくなったけど我慢した


私はカバンを持って足早に匡人の部屋を去った