零と二人でしばらく住宅街を歩いていると、零が突然達也の顔を覗き込んで来た。
「何を考えてる?」
「え?」
考え込んでいる達也の顔色を見て気になったのだろう。
心配してくれているのかと思ったが、聞くだけ聞いといて零は呑気にタバコを吸い始めた。
達也は特に気にせず独り言のように呟いた。
「死んだほうも辛いけど、残されるほうも辛いんだな」
「そりゃそうだろう」
一応なのか、零は答えてくれた。
「今までずっと近くにいた人間が突然いなくなるんだからな」
「そうだよな…」
俺は自分が死んだと思い知らされて絶望しか感じなかった。
まだまだ未練だってあるし、今でも時間が戻ればいいと願ってる。
俺は今この世で一番不幸な人間だと思っていた。