二人のおうち

 

引越屋が届けた荷物は次々に洋太の部屋へと運ばれた。沙帆はそれの邪魔にならないように、リビングの端で洋太を眺めていた。
 

洋太を眺めながら、恋人ができた場合はどうするのだろうと沙帆は思っていた。
 

洋太さんなら美人な彼女がいそうなものなのにな。そう思いながら、沙帆は改めて洋太をじっくりと見た。
 

きっと百八十センチメートルはあるであろう長身と、淡いブラウンに染められてウェーブがかっている髪。
少しだけタレ目で、笑うと更に優しい顔になる。
どことなく色気を感じる唇と顎のライン。
 

あのラインにキスをしたい。
沙帆は無意識にそう思った。
 

 
「ねえ、洋ちゃん」
 

「洋ちゃん?俺洋ちゃんなの?」
 

「うん」
 

 
沙帆の急な発言に、荷物を持ったままの洋太はなんだかおかしくなって笑ってしまった。
沙帆は財布を持って洋太を見上げている。
 

 
「晩ご飯のお買い物に行ってくるね」
 

「ああ」
 

 
まるで新婚気分だなと洋太は思いながら、ぺたぺたと歩く沙帆の後ろ髪を見ていた。