沙帆は帰宅途中、マンションのそばのスーパーマーケットへ立ち寄った。
今晩は洋太に何をご馳走しようかと、かごを乗せたカートを押す。
卵の値段に唸りながら沙帆が立ち止まっていると、マナーモードに設定したままの携帯電話が振動し始めた。
画面を確認すれば、相手は洋太だ。
沙帆はカートを端に寄せながら、携帯電話を耳に当てる。
「もしもし、洋ちゃん」
「ああ沙帆、もう帰ったか?」
「ううん。今スーパーにいるの。野菜や卵を買っておこうと思って」
洋太はふうん、と頷いた。
沙帆は携帯電話を片手に、野菜コーナーへ移動する。白菜を持ち上げて、できるだけ新鮮なものを購入しようと吟味する。
「それなら迎えに行くわ」
「えっ」
「一人で持って帰るのは重いだろう」
「だ、大丈夫だよ」
沙帆がふるふると首を振りながら、選んだ白菜をかごに入れる。
「いや、というよりもうスーパーに到着しちまったから」
「えっ」
沙帆が振り向けば、洋太がちょうど店内に入ってきたところだった。

