「そろそろ片付けないとね」
 

「昨日買ったラックなんかも夕方に届くしな」
 

 
今日は一日中掃除になりそうだ。
天気も爽やかで春一番が吹き抜け、窓は開けっぴろげてある。沙帆の髪がなびくのを、洋太は眺めていた。
 

 
「あーあ。あっという間に入学式が来ちゃうんだろうな……」
 

「緊張する?」
 

「うん……」
 

 
呟く沙帆に、笑みが零れた。
 

 
「沙帆なら大丈夫だよ」
 

「え?」
 

「もう俺と馴染んでるくらいだからな。心配することは何もない」
 

「そうかなぁ……」
 

 
この調子では、俺の知らぬ間に沙帆は恋人を作ってくるんだろうな。
なんて、年甲斐もなく洋太は思った。まるで沙帆の保護者気分だ。
 

 
「さあ、食ったし片付けるか」
 

「うん」
 

 
沙帆は持ってきた時と同様に、トレイに空になった皿を乗せてキッチンへ向かった。間もなく皿を洗う水の音が聞こえ始めた。
 

洋太は腰を上げて、リビングにある段ボールの箱を開け始めた。