目が覚めると、生活の良い匂いがした。
洋太は暫くしてむくりと体を起こすと、時間を確認しようと時計を覗く。
 

もう午前十時を回っていた。
 

 
「沙帆……?」
 

 
部屋から出て、呟くように沙帆を呼んだ。
 

 
「洋ちゃん、おはよう」
 

「あぁ……おはよう」
 

 
沙帆はテーブルの脇に座り、洋太を見た。それからクスクスとおかしそうに笑う。
 

 
「何?どうかした?」
 

「洋ちゃん、座って」
 

 
沙帆の言うままに、洋太は沙帆の隣りに腰を下ろす。すると、沙帆の手がゆっくりと洋太の髪に触れた。
二人の距離が近くなる。
 

 
「寝癖がついてるよー」
 

「えっ、そんなに酷いか?」
 

「ううん……、なかなか頑固だねえ」
 

 
後で水で濡らしてみるしかないね、と言いながら、沙帆の手が洋太の髪を梳く。