「なんだか……。洋ちゃんずるいっ」
「何が?」
唇を尖らせて沙帆が言う。
洋太が不思議そうにしていると、席へ案内する店員が出てきた。
「お待たせして申し訳ありません。二名様ですか?」
「はい。あっ、禁煙席でお願いします」
「解りました。こちらへどうぞ」
洋太が店員と早々に話してしまい、沙帆は黙ったまま立っていた。
「行くぞ、沙帆」
「はいっ」
洋太は再び沙帆の背中を左手で押し、店員について行った。
沙帆はされるがままである。
「お決まりになられましたら、そちらの呼び鈴でお呼び下さい」
「ありがとう」
「……。なんだか洋ちゃん物凄く慣れてるね」
「よく来るからなあ」
「女の人と?」
「いやいや、そういうわけじゃあないよ。さっきから沙帆はそればかりだな」
沙帆の探るような眼に洋太は弱っていた。
それから沙帆はメニューに視線を落とし、悩み始めた。

