「親父さんから聞いていないのか?」
 

「……」
 

 
聞くも何も、初耳だと沙帆は思った。
まあとりあえず座れよと、その男に促されてその場にぺたんと座り込む。
 

 
「俺は甲斐洋太、年は二十二だ。お前の親父さんと俺の親父が幼馴染みで、一人暮らしは不安だからと俺があんたの用心棒にというわけ。解るか?」
 

「用心棒?一緒にここで暮らすんですか?あたしが、貴方と」
 

「まあそうなる」
 

 
有り得ない!沙帆は驚きを隠せず目を見開き、心の中で目一杯叫んだ。予想もしていなかったことだ。
 

 
「まあ、あとで親父さんに問い合わせてみろよ。とりあえずは部屋にあんたの荷物を運んでやるから」
 

 
沙帆は訳も解らないままとにかく立つように促され、荷物を運ぶことになった。