沙帆はまだドキドキしていた。
そのドキドキする原因の洋太自身はまだ風呂からあがってきていない。
 

着替え終えた沙帆は、火照る体を涼めようと再びリビングの出窓の側へと座り込んだ。
 

 
「ふう」
 

「悩ましい溜め息だな」
 

「きゃっ!」
 

 
沙帆の背後からぬっと洋太が声をかけた。
ぴくりと沙帆は反応して、洋太の方へと振り返った。
 

 
「風呂出たからコンビニ行こう」
 

「あ、うん」
 

 
ふふ、と沙帆は笑った。
戸締まりの確認をしてから、二人は財布だけを片手にすっかりと暗くなった住宅地を歩いた。
沙帆の長い髪はまだ乾いていない。
それに比べていくらか短い洋太の髪はさらさらと風になびいていた。
 

 
「到着っ」
 

 
沙帆が嬉しそうに行った。
そんな沙帆を見て洋太はほほ笑む。
 

 
「夜にコンビニに行きたい時は言えよ。一人だと危ないからちゃんとついてくるからな」
 

「はあい。洋ちゃんも行く時は誘って下さいねー」
 

 
洋太は、沙帆が言葉の語尾を伸ばす癖は母親に似たものかなと思った。
洋太は沙帆の両親と面識があるのだ。