「沙帆は昨日から春休みだったっけ」
「うん、朝寝坊ができる」
嬉しそうに沙帆が言った。
ああこいつは笑顔がいいんだな、と洋太は思った。
「洋太ちゃんは、普段は何をしている人なの?学生さん?」
洋太と会ったばかりの沙帆は洋太の事を何も知らない。
洋太は沙帆の父親から聞いているので、あまり支障はない。
「大学は今月の頭に卒業したんだ。派遣会社に勤める事になってるんだよ」
「そうなんだ……。あっ、洋ちゃん恋人はいないの?もしいるなら」
「ああ、今はいないから大丈夫だよ。できたらちゃんと言うしな」
「でも……。彼女ができたらあたし、一緒に暮らすわけには」
沙帆が不安そうに俯いた。
洋太は不思議そうにしている。
「あたしはこんなに年下だけど他の女と暮らしているだなんて、彼女なら知ったら嫌でしょう?」
あたしなら嫌だものと付け加えてから、沙帆は再び下を向いた。
洋太は何事もないような顔でいる。
「気にしなくても大丈夫だよ、沙帆」
「え?」
「今特定の女を作るつもりはないから」

