「洋ちゃん、できましたっ」
中履き用のスリッパをぱたぱたと言わせながら、沙帆が料理の乗った皿を持ってくる。
洋太は素早く立ち上がり、オムレツの乗った皿を受け取った。
こういう時に手を貸してくれる洋太。こんなに気が利くんだもん。もてるんだろうな。
買い物から帰ってきた時にも荷物を持ってくれたし、と沙帆は思う。
「いただきます」
二人で声を揃えて言った。今の時刻は午後六時。少し早めの、初めての晩ご飯となった。
もくもくと洋太はオムレツを口へと運んでゆく。
その様子を沙帆は黙って見ていた。
「沙帆、見過ぎだって」
洋太が笑いを堪えるように言った。
「えっ、だって何も言わないから美味しくなかったかなと思って」
「旨いよ、さすが女の子だな」
「良かった」
沙帆がふわりと笑った。
思わずドキリとした洋太だった。
危ない、危ない。
こいつは天然フェロモンの持ち主だ。

