それでね、と沙帆は続けた。
「電話をかければいいんだって気が付いたんだけどね、よく考えたら会ったばかりだし連絡先知らないなと思って」
「ああ、そういえばそうだな。登録しておいて」
そう言いながら洋太はポケットから携帯電話を取りだし、沙帆へ手渡した。
それをしっかりと受け取ると、沙帆は自分の携帯電話を開きながら番号を交換し始めた。
その様子を黙って見ていた洋太は、一度に二つ以上の事ができない子なんだなと思った。
沙帆はあっという間にメモリーに登録を済ませたらしく、携帯電話を洋太へと手渡してまた洋太に向き直った。
「洋ちゃん、食べ物のアレルギーはない?」
「ああ、ないよ」
「そう、良かった。動物アレルギーとか、花粉症とかは?」
「花粉症?まあないと思うよ」
何かがずれているんだよなと思った。
沙帆はそれだけ聞くと満足したらしく、晩ご飯の用意をすると言ってキッチンへと向かった。
洋太は晩ご飯の用意が整うまでの間、一人でテレビを眺めていた。

