「よいしょ」
 

 
日当たり良好、バスタブとトイレは別。一人で暮らすには余るほどの部屋。
 

なんとまあこのような好物件を自分の親は見つけて来たものだと、沙帆は荷物を運びながら思うのだった。
 

女の一人暮らしだからと心配性の父親が一緒に探してくれたこのマンションは、とても綺麗で暮らすことを沙帆も楽しみにしていた。
 

 
「……」
 

 
独り言が増えてしまいそうだなと、沙帆は思った。
 

がちゃりとドアが開く音が部屋に響く。
びくりと反応した沙帆は、自分以外の音がするはずのないこの部屋の、音がした方を振り返った。
 

 
「え?」
 

「誰、あんた」
 

 
そこには一人の男が立っていた。