「ははっ!やっぱ佐渡おもしれぇ」

木崎は私の言葉に笑った。笑う要素なんてなかったと思うけど。
とりあえずこいつらを私の席の周辺からどけなくちゃ。

「どうもありがとう。それより早く座りたいんだけど」
「ん?じゃあ俺の膝の上とか座る?」

そう言って木崎はおおげさに腕を広げて見せた。「きゃーっ!!」って女子から歓声にも似た黄色い声が上がる。え、何それうらやましいの?これが?
……信じられない。
私だって馬鹿じゃないし、木崎がモテることぐらいは分かるつもりだ。でも膝に座ったりして嬉しいの?ありえないんだけど。

「……悪いけど遠慮する。それから───」

なんで付き合ってもない人と馴れ馴れしく出来るのかがわからない。こうやって軽く「待ってた」とか言う人は論外。軽い男は一番嫌い。
近づきたくないけど私は木崎に近寄った。こういうときだけ避ける女子は何がしたいんだろう。木崎の目の前に立つと、目が合った。「何?」なんていいながら笑う木崎に苛立つ。座っている木崎を見下ろしながら、私は大きく腕を振り上げて───

───パシィィンッ!

振り下ろした。

「あんたみたいな人、大っ嫌いなの」

君は、あんなにかっこいい人だったのに。
目の前のあんたはなんで最低なの。

私は、かなり怒っていたみたいだ。