「ちょっとお前、何じゅんじゅんにそんなこと言ってんの?」
「事実じゃん。それと、あんたも邪魔。人の名前が覚えられない瀬々良木さん」
「なっ……!」

木崎を瀬々良木菜乃がかばった。ちなみに瀬々良木はさっき私を「誰?」って言ってた人。私が言ったことが気に入らなかったのか、瀬々良木は立ち上がった。

「うるさい!なんであんたなんかが───」
「菜乃ー落ち着けって。なっ?」
「!……じゅんじゅん」

立ち上がった瀬々良木の腕を引き、木崎はヘラヘラと笑う。……むかつく。しかもそれで引き下がる瀬々良木も気に入らない。「だよねー、こんな挑発乗るんじゃなかった。あたしって大人ーっ!」とか言ってるし。挑発なんかしてないけど、まぁしたとしたら思いっきり乗ってるじゃん。どこが大人なのか分かりやすく教えてほしいぐらいだね。

「なっ俺さ、佐渡のこと待ってたの。話さねぇ?」

瀬々良木が引っ込めば今度は木崎が話しかけてきた。笑いながら、手まで振って。
きっとコイツは、いままでそう言ってたくさんの女子を落としてきたんだろう。顔だって桜空に言わせるとかっこいいらしいし。

「面倒だからやだ」
「そんなこと言わねーでさ!待ってやったんだぜ?俺」
「頼んでない。どいて」

また女子達から声が上がる。「何それーっ!?」とか「信じられないんですけど!」とか。むしろ何がいいのかがわからないよ私には。
っていうか誰が待っててなんて頼んだんだ。