桜空と二人で教室へ入ると、ちょうど部屋の中心あたりに人が集まっているのが見えた。

「ねぇ藍音。あれ何かな?」
「さぁ……?」

見慣れない風景すぎる。あきらかに不自然。そんなものには近づかないほうがいい。……けど。

「……私の席じゃん」

最悪。
なんでこう、めんどくさいことが起こるわけ?ああいううるさい人達には関わりたくないのに。

「どうするの?」

桜空にそう聞かれて、私は「どかす」と即答した。だって邪魔だし。桜空は「藍音らしい
」って笑った。
そして席に近づく。
話が盛り上がっているのか、私の席の周りに居る人達は全く気が付かない。振り向きすらしない。よく見れば、話しているのは女子達と一人の男子だった。

「あははっもー、じゅんじゅんってばまた───」
「ねぇ、邪魔なんだけど」
「……はぁ?何アンタ」
「誰?コイツ」
「ほら、あれだよ。さっきじゅんじゅんが言ってた───」

誰、とか失礼にも程がある。クラスメイトの顔と名前ぐらい覚えてなさいよ。しかも誰だよ、じゅんじゅんって。

「おっ、やぁーっと来た!佐渡!」

どかないどころか敵意むき出しの女子達の中心に居た一人の男子が私の名前を呼んだ。こいつ───木崎潤か。やっとってことは、私を待ってたってわけ?なら、木崎がこの集団の元凶?私の席に座ってるし、たぶんそう。

「ったく遅ーよ佐渡ー。俺待ちくたびれ───」
「どいて」
「……え?」

木崎の言葉を遮るように話す。ってか遮るために話したんだけど。こんなやつの話なんて聞くだけ無駄。

「そこ、私の席。座れないからどいてよ」

そう言えば周りの女子がざわつきだした。