『・・皐。アレの気配がする』


「うむ・・。まさか・・奴が居るのか!?」



『分からない・・。とにかく急ぐよ』


「わかっとるわ」



先ほどよりもスピードを上げて走る燦。


そのまま走り続けて数分、突然女の叫ぶ声がした。


「燦!」


『どうやら、お出ましだ。』


路地を左に曲がれば、腰を抜かした女と民家の屋根より少し大きい黒く不気味な”何か”が居た。


『平気か?』


腰を抜かして、その場にへたり込んでいた女に近づく。


女の顔には恐怖の色がにじんでいる。


『・・皐。』


皐の名を呼び、皐に視線を向ければこくりと頷いた。


俺は無言でその女を立たせると、皐に付いていくように行ってその場を離れさせた。