いい加減というか、ルーズ極まりない代替輸送だった。都心じゃとても考えられない。
 私たち3人は呆気にとられながらも、ワゴンに乗り合わせることになってしまった。
 私は、こんな得体の知れない不気味な空間で過ごすより、駅のホームで野宿することのほうが安全だと思ったが、どうしても今日中にあのランプの宿に行きたかった。それに、運転手が強引に私の荷物をトランクに載せてしまったのだ。

 「あの、電話してもいいですか?」チェックインが気になっていたので、ランプの宿に遅くなることを連絡しておこうと思った。
 「こんなとこでも電波がとどくんかのお?」嫌な事を言う運転手だ。
 案の定、携帯電話は圏外だった。

 「あの、ランプの宿、知ってますか。そこに行きたいんだけど」とにかく私は精一杯の強気でまくし立てた。
 「ごめんなさい。私先に送ってもらってもいいですよね」

 内心どきどきものだったが、先手必勝。いざというとき女のほうが強いのだ。
 運転手を含め、後の二人は、しかし存外に、あっけなく、私に同意してくれた。

 「どうぞ、お先」
 雪駄大男は、高倉健ばりにぼそっと口を開いた。意外と紳士だった。

 「私もいいですよ」憔悴中年も良い人かもしれなかった。でも、自殺の可能性だってある。

 どちらにしても同乗した二人が同意したので、運転手も心得た様子で車を走らせた。