「んな簡単なことじゃねーんだよっ!!」
お母さんの言葉に蘿蔔は男ならではの迫力のある低い声で怒鳴りちらした。
耳がビリビリする。
今日のお父さん怖い…
涙目になりながらそんなことを考えていたんだろうな、私は。
「いいよな、お前は。
俺の苦しみなんか知らずに呑気にケーキ作ってよぉ」
【ドカンッ】
蹴られたテーブルは大きな音をたて、
その上のケーキは虚しく床に落ちる。
箱が少し開いていたため、
みごとに崩れたケーキが顔を出す。
まるで私たちの結末を示すように。
けれどお母さんも黙ってはいなかった。
「なにをするの!?
優花、ケーキはみんなで食べたくて、お父さんのこと待ってたのよ!?」
「うるせぇ!!」
………【パシンッ】
『お父さんが
お母さんを
思いっきり
殴った?
なに、これ??』
…私はあのとき、自分自身の頬を叩いた。
『夢は早く覚まさなければ、』
そんな一心で。



