そのミキの姿はまるで囚われの姫君…―美しい彼女は、他人に拝まれることもなく、その西洋風の豪邸という鳥かごの中におさまっている

そんな彼女は基本的にベッドの上での生活
それは何故か…―そうするように言われているから

ミキは産まれながらの病気なのだ…―そう父から言われ続けてきた
ミキの父、ユウジは『ミキは病気なのだ』と、何の病気とも告げず、ユウジはミキに、そう伝え続けてきた

昔、一度だけ聞いたことがある
そろはミキが高校生の時だったような

「お父様」
「なんだい、ミキ。どこか苦しいのか?」
何故かどんな時でも帽子を深くかぶり、しっかりと顔を見れない父親は、彼女に精一杯の愛を注いでくれる
「ねぇ、お父様、私はどんな病気なの?」
「…―え?」
「私、もう何でも分かる歳ですわ。ねぇ、お父様、私は…」

ミキは言葉を止めた
それは何故か…―父親が涙を流しはじめたから

「私はガンなの?」
「違うよ」
「では、なに?」
「原因不明なんだ…。ごめんミキ、父さんはその話になるとユミの事を思い出すんだ」
「お母様?」

ミキはそれ以上何も聞くことはなかった
ミキの頭の中には、原因不明とユミという母親の名前が、ユウジの声で何度もリピートされるようにずっと、ずっと残っていた