日光浴がしたい、とユウジに頼み、窓際に揺り篭のように揺れるアンティーク調の椅子を置いてもらった…―一日のほとんどをベッドの上で過ごしていたミキは、少し変わり窓際の椅子に座っての生活が多くなった

「あ…来た…」
ミキが待つその人は、名も歳も、顔さえもよく分からないとある男…―薔薇男さん

「…あら?今日は薔薇ではないの?残念」
返事もない、遠くのその人に問い掛ける日々

今日、薔薇男が持つのは青い花束、ミキの好きな深紅の花ではない…―しかしミキは気付いた、その青い花が薔薇に似ている

「…―青い薔薇?そんなものがあるの?」

かじりつくように青い花束を見ていたせいか、いつものように部屋に入ってきた遠野に気が付かなかった…―真剣に外を見ているミキを見て遠野は不思議そうに声をかける

「お嬢様?」
「ひっ……」
すっかり意識を持って行かれていた為、遠野に声をかけられ、肩を跳ねさせ驚いた

「そんなに驚かないでくださいよ。外に何か良いものでも見付けました?」

「…―え?」
良いもの、見付けた…―でも秘密にしておきたい、薔薇男は自分だけのものだと…いつしか独占欲さえ生まれていた

「お嬢様?」
「え、あ、…青い薔薇ってあるの?」
「青い薔薇ですか?えぇ、ございますよ」

あの人はやっぱり薔薇男…―赤い薔薇から青い薔薇まで、ミキを喜ばせた

「青い薔薇をご存知だったのですか?」
遠野の質問に、目を泳がせて思い付いたように、外に目を向けた
「み、道行く人が、青い花束を抱えていたから…薔薇に似ていたから、それで、ね」

嘘をついた…―遠野は何に対しても無関心だったミキが、薔薇に興味を持ってくれた事が嬉しかったのだろう、疑う様子もなく嬉しそうに笑った

「では、お嬢様…明日、青い薔薇を持ってまいりますね」
「え、えぇ!楽しみにしているわ」
そんな遠野の言葉に、ミキは無邪気に笑うのだった

あの公園には、薔薇男がミキの住む家を静かに眺めていたのであった

ミキは心から、薔薇男の虜になったそうな…