おおお王子って、まさか…! ちらっと廊下の窓の奥に覗いた黒髪を見て、サッと血の気が引く。 「―――ぃ、一瀬くん…」 昨日の出来事が鮮やかに思い出される。 『気に入った』 カアァァッ…… 次は顔にひいていた熱が集まる。 「ほら!見える?琴音」 人垣の前で引きずられたあたしを、美波が嬉しそうに振り返る。 そして、顔を真っ赤にさせているあたしを見て首を傾げた。 「あれ?どうしたの?」 「えっ、と………」 い、言えないようぅ…! あの王子と喋りました。 なんて…! その上―…