「まぁ、行ったみたら分かるよ。愛しの颯ちゃんのところ」
「み、美波っ!」
「ふふっ」
もうっ――!
そう怒鳴った私の声は、廊下から響いてきた黄色い歓声で掻き消された。
えっ…な、何なの!?
「あっ!“王子”じゃない!」
ガタンと椅子を大きな音を立て、立ち上がる美波。
「行こっ、琴音!」
「行くって……っひゃあ!」
えっ!?
ものすごい勢いで腕を引っ張られ、引きずられるようにして椅子から立ち上がった。
「ちょっ…!美波!?」
「早くおいでよっ!王子が行っちゃうじゃない」
美波の目がキラキラと輝いている。

