「颯ちゃ…、藤木先生に返すように頼まれて……」
危なかった…
つい癖で颯ちゃんって呼びそうになっちゃった。
秘密、なんだ。
あたしたちが“いとこ”ってことは。
何でなのかはわかんないけど、颯ちゃんがダメって言うから。
「…あっ」
そんなまるで違うことをあたしが考えていた間に、彼はそっと屈んで本を手に取っていた。
じっとそれを見つめていたかと思うと、おもむろに立ち上がった。
「……どこ?」
「えっ?」
「どこだよ」
な、何で睨まれてるの?
不機嫌そうにアメジスト色の瞳が細められているのを見て、あたしの頭の中はまたもやパニック。

