ごくんと唾を飲み込み、キュッと胸の前で両手を握った。


バクバクと心臓がうるさい。




「誰?」




再び問われるその声に答える余裕なんてない。


わなわなと震える唇から、小さな声を振り絞る。




「一瀬…くん……?」




あたしの言葉に、フッと微かな笑い声がもれた。




「―――ふーん…」




面白そうにアメジスト色の瞳が細められる。




「俺のこと、知ってんの?」




知ってるもなにも……






その瞳の色だけで分かる。




「お、王子……」




この学校の王子様だって。